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イノベーション・ジャパン2016(8月25〜26日)


イノベーション・ジャパン2016 ポストITO透明導電膜の提案が活発化が

 8月25〜26日、東京ビッグサイトで開かれた「イノベーション・ジャパン2016」。エレクトロニクス関連のWhat's NEWをピックアップする。

仕事関数5.0eV以上の透明導電材料を有機ELのアノードに


図1 光電子収量分光法による測定結果比較(工学院大学)


写真1 ITO膜とISO膜の外観比較(工学院大学)

 ここにきて本格量産の気運が高まっている有機ELディスプレイ・照明デバイス向けでは、工学院大学がポストITOアノードを提案した。In2O3にSiO2をドープしたIn-Si-Oで、SiO2によって5.0eV以上という高い仕事関数が得られる(図1)。マックスの仕事関数は6.0eVで、スパッタリング成膜後、既存のITO膜と同様、UVオゾン処理やO2プラズマ処理といった後処理を追加すればさらなる仕事関数UPが見込める。いうまでもなく、有機ELのアノードに用いればホール注入層またはホール輸送層とのキャリア注入障壁が低減するため、発光効率向上が期待できる。

 また、元来アモルファス構造のため表面平滑性がRms=0.2nmときわめて高く、特殊なスパッタ法で成膜したり、成膜後に研磨またはアニールして平坦化する必要もない。もちろん、コンベンショナルなITOと同じ成膜プロセス・ウェットエッチングプロセスが適用できるため、デバイスメーカーは新たな製造プロセスや製造装置を開発・導入する必要もない。さらに室温でも成膜可能で、ブースではPETフィルム上にIn-Si-O膜を室温成膜したサンプルを展示。その透明性もITO膜以上であることを示した。ちなみに、有機ELデバイスはまだ作製していないため、どのぐらい発光効率が向上するかは未確認とのこと。

単一材料で白色発光を

 有機EL発光材料では、立命館大学が単一化合物で白色発光を示すニューマテリアルを発表した。合成したのは図2の高分子液晶とその単量体で、固体中でも強く発光するAu化合物を側鎖に用いた。もちろん、液晶性なので分子の凝集状態を容易に制御することができる。図3は発光スペクトルで、x=0.3、y=0.3とブロードなスペクトルが得られる。気になる外部量子効率は蛍光だけに10〜20%だという。

焼成レスでピュアCNT膜が得られるCNT分散液が


写真2 CNT分散液(右)とCNT透明導電膜付きフィルム(富士化学)


図2 高分子液晶とその単量体、これらの発光スペクトル(立命館大学)

 ポストITO透明導電材料として注目されるCNT(カーボンナノチューブ)では、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトの成果として富士化学が新たな透明導電膜用CNT分散液をアピールした。

 自社製造したシングルウォールCNTを独自の無機分散剤によって安定的に分散したリキッドで、各種ウェットコート法で塗布後、独自開発した酸系エッチャントで無機分散剤を除去するのが特徴。つまり、処理後は焼成レスでピュアなCNT膜が得られる。このため、耐熱性が低いプラスチックフィルムにも容易に塗布することができる。気になる表面抵抗値は300Ω/□。その有効性を実証するため、このCNT透明導電膜をアノードに用いたフレキシブル有機薄膜太陽電池を試作。光電変換効率は0.67%と評価するレベルではないが、有機薄膜太陽電池にも適用可能なことを示した。

静電塗布法を用いて有機薄膜太陽電池の特性を向上

 製造装置関連では、埼玉大学の研究グループが静電塗布法を大々的にアピール。この方法で有機層を成膜すれば高分子有機薄膜太陽電池が比較的容易に作製できることを示した。

 まずITOアノード/PEDOT:PSS/P3HT:PCBM/PCBM/Alという構造の高分子デバイスを作製。P3HT:PCBM半導体層はスピンコート法、PCBMバッファ層は静電塗布法で成膜した。この際、双方のレイヤーとも同一溶媒を用いたが、ウェット法とドライ法の中間的性質を備える静電塗布法の特徴によって下層である半導体層はダメージを受けないことが確認できた。


図3 マルチノズルを用いたグラデーションレイヤーの作製イメージとデバイス特性(埼玉大学)


写真3 R&D用静電塗布装置(埼玉大学)

 さらに、静電塗布法ではグラデーションレイヤーを作製することも容易なことをアピール。図4のように、それぞれのスプレーノズルからn型材料とp型材料をスプレー成膜し、これらの吐出時間を制御することにより擬似的i層のようなグラデーションレイヤーも容易に成膜できる。実際、図3のようにデバイス特性も大幅に向上したとしている。

 

 

 

 


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